
水道の基礎知識給水設備配管素材
建物へ安全に水を供給するために欠かせない「給水管」。
使用される配管の材質には複数の種類があり、それぞれ耐食性・強度・施工性・コスト・用途が異なります。
この記事では、代表的な給水管の種類と特徴、適した使用環境、施工時の注意点を詳しく解説します。
給水管には、以下のような材質が主に使用されています。それぞれの特性を理解し、設置場所や用途に応じて選定することが重要です。
・硬質塩化ビニルライニング鋼管
・ステンレス鋼管
・銅管
・ダクタイル鋳鉄管
・硬質ポリ塩化ビニル管(VP管)
・架橋ポリエチレン管(PEX管)
・ポリエチレン二層管
・ポリブテン管(PB管)
鋼管の内面に硬質塩化ビニルをライニング(被覆)した構造で、機械的強度と耐食性を兼ね備えています。
耐熱性を高めたタイプ(耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管)は、給湯や冷温水配管に用いられ、連続使用温度は85℃以下です。
・切断・ねじ切り時に局部加熱を避ける
・ライニング層を傷つけると防食効果が低下するため注意
・主な用途:給湯管・冷温水管・ビル設備配管など
耐食性が非常に高く、軽量で扱いやすい材質です。
錆びにくく衛生的であるため、住宅・商業施設・病院などで幅広く使用されています。波状ステンレス鋼管(フレキシブルタイプ)は、耐震性と変位吸収性にも優れています。
・耐久性・衛生性が高く長寿命
・波状管は継手が少なく施工が容易
・主な用途:給水・給湯・耐震配管
銅管は耐食性と耐寒性に優れ、スケールの付着が少ないのが特長です。
軽量で柔軟性があり、寒冷地の給水・給湯配管に多く採用されています。ただし、有機酸や炭酸を多く含む水には不向きです。
・硬質銅管と軟質銅管があり、軟質は手曲げ加工が可能
・軽量で施工性に優れるが、水質に注意
・主な用途:住宅内配管、寒冷地給湯管
ダクタイル鋳鉄とは、黒鉛を球状化して延性と靱性を高めた鋳鉄素材です。
高い強度と柔軟性を併せ持ち、主に配水管や幹線管などの地中配管に使用されます。
・地盤変動に追従できる可とう接合を採用
・長距離配管や都市配水網に適する
・主な用途:配水本管・耐震配管
軽量で施工が容易な塩ビ管。
難燃性を備える一方で、熱や衝撃に弱いため取り扱いには注意が必要です。
耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管は90℃以下の給湯配管にも対応します。
・金属管に比べ軽量・安価・施工性が高い
・有機溶剤や灯油類と接触させない
・主な用途:屋内給水・排水管
ポリエチレン分子を化学的に架橋させ、強度と耐熱性を高めた配管材。
軽量で柔軟性が高く、流体抵抗が小さいことから住宅設備のさや管ヘッダー工法などに多く使われています。
・耐熱・耐寒・耐食性に優れる
・柔軟で施工しやすく、継手箇所を減らせる
・有機溶剤・油類との接触を避ける
異なる特性を持つ2種類のポリエチレンを重ねた二層構造。
外層は耐候・耐圧性能、内層は滑らかな水流と衛生性を確保しています。
・軽量で施工性が高く、耐薬品性にも優れる
・有機溶剤や油類と接触しないよう管理
・主な用途:屋内・屋外給水管、集合住宅配管
高温下でも高い強度を維持し、金属管に比べて腐食・電食に強い配管材。
温水用として適しており、架橋ポリエチレン管よりも柔軟性に優れますが、傷に弱いため施工時の取り扱いには注意が必要です。
・高温でも変形しにくく、温水用配管に最適
・施工時の擦り傷・衝撃に注意
・有機溶剤・灯油との接触を避ける
給水管の選定は、建物の構造・使用目的・水質・施工環境を総合的に判断して行います。
それぞれの材質が持つ特性を理解し、適切に組み合わせることで、長期にわたり安全で効率的な給水システムを構築できます。
・屋外配管:耐圧・耐寒性の高いダクタイル鋳鉄管やステンレス鋼管
・屋内配管:軽量で施工性の良い樹脂管(PEX・PB管など)
・給湯ライン:耐熱性に優れるライニング鋼管またはポリブテン管
給水管は、材質によって寿命・施工方法・メンテナンス性が大きく異なります。
耐食性・温度変化・コスト・用途に応じて最適な配管材を選定し、正しい施工管理を行うことが、長寿命で安全な給水システムを維持する鍵です。

