去年、和歌山市で水道水を送る端の崩落事故が発生し、1週間で約60,000世帯が断水しました。
現在、日本の水道は危機に瀕しています。
水道管の老朽化が深刻な問題となっており、年間の漏水事故件数は20,000件以上に登っています。
約40年とされている耐用年数を超えて使われている水道管の割合は約17%。
中でも大阪府は全国ワースト1の約31%となおり、大阪北部地震ではそれらの水道管が破裂・断水が相次ぎました。
また、日本全国で耐用年数40年を越えた水道配管は、長さを合わせると120,000キロを超えています。
なんと地球3周分の水道管が老朽化しており、破裂による水漏れの被害・それに伴う断水被害がいつどこで発生してもおかしくない状況になっています。
私たちの暮らしに欠かせない水道水。
実は飲み水として使える国は意外と世界でも少なく、アジアでは日本、シンガポール、アラブ首長国連邦の3ヵ国のみです。
水道料金自体も日本は割安で、ニューヨークやロンドンなどの世界の主要都市と比べると二分の一ほど。
【日本の水道水だと100円で約580ℓ(浴槽3杯分)】
料金の安さや徹底された安全性など世界でも高い水準を誇る日本の水道水ですが、いたるところでなぜ老朽化が進んでいるのでしょうか?
【現在、道路の下や建物の下など、地中に埋まっている水道管のほとんどは高度経済成長期に整備された為、全国の水道管に老朽化の波が一気に押し寄せ、いたる所で水漏れのトラブルが発生している状況なんです。】
Q:古い管の修理や交換がなぜ進まないの?
A:水道管の修理や交換は、距離が長くなるほど近隣の水道全体を長期間断水しなければならず、それを回避するために仮説水道管(工事中のみ使用する仮の水道管)が必要になり、普通に交換するよりもかなりの時間をロスしてしまうのです。
【1.断水を避けるため、一時的に水を供給する仮説水道管を埋め込む→2.完了後、ようやく修理作業や新しい水道管の交換作業開始】
【長さ500メートルの水道管を交換する工事期間は、約6カ月程と言われています。】
上記の問題とは別に、費用の問題も水道管の修理や交換がスムーズに進まない理由の一つなんです。
Q:市が管理している水道管の修理や交換の費用って、誰が払ってるの?
A:水道事業は市民が払う水道料金を主な財源となっていますが、日本人口の減少で水道事業の収入が減り続けているんです。
【水道事業は約3分の1の自治体で、工事などの経費が収入を大きく上回っている】
【水道管1キロメートルを交換するのにかかる費用は約2億円かかるとされ財源不足が問題となっています】
それでも、水道管自体の老朽化は待ってくれませんので、修理や交換工事の優先順位が非常に重要な課題となっています。
〇全国の水道管の修理や切り替え工事が進まないもう一つの理由
私たちの足元に埋まっている水道管ですが、その水の圧力はとても強く、大きく水道管が破損してしまうと地中から物凄い量の水が吹き上がってしまいます。地域にもよりますが、たった1か所の水漏れでも【近隣地域数万世帯の断水】などを引き起こす事もあります。
しかし、水道管の水漏れでこのようなケースは珍しく、ほとんどが地中で少し漏れる程度で地表からは目視できないため、【水漏れ箇所の特定】がとても難しいのです。
Q:水漏れって、ブシューッ!ってなるイメージだったけど違うんですね。目で見えない水漏れの場合、どうやって水漏れ箇所を調べるの?
A:そんなに水漏れの勢いがない場合、「水が染み出ている所を掘り起こしても違う場所だった」というケースはよくあります。地中で漏れている水は広く浸透していますので、染み出している真下が水漏れ個所とはならないのです。土壌を掘って埋めて、掘って埋めて、水漏れ個所を探すのに丸1日かかる場合もあります。
意外とアナログで驚かれるかもしれませんが、水漏れ調査では専用の機器を使い人の耳を頼りに地中で水が漏れ出している音を聞き取る方法が一般的です。
車の走行音や下水の音、近隣の工事音など地球の音を聞き分ける熟練の経験が求められており、水漏れ箇所を見つけるのは時間と労力がかかります。
なかなか進まない水道管の老朽化問題。
そんな中、最先端の技術で解決に向けて動き出した自治体があります。
Q:知れば知るほど大変な問題ですね、その分「最先端の技術」にとても興味があります。いったいどんな技術なんですか?
A:愛知県豊田市で開始された、AI解析した衛星の地域画像から、【破損・水漏れの可能性がある区域】を確認できるシステムです。
【全国で初めて人工衛星を活用した水道管の水漏れ箇所を特定する技術を導入】
【地図上の色で、水道管水漏れの可能性が高い区域をすばやく確認できる画期的な技術なんです】
〇人工衛星の活用方法
1.人工衛星(大地2号)は地球を回りながらマイクロ波を照射。
2.マイクロ波は地中3メートルの深さまで届き、地中に埋められた水道管の水漏れをキャッチ。
3.人工衛星によって水漏れの可能性があると検知された水道管箇所の修理や交換工事をすばやく開始。
地道に人の耳と足を使っていた水道管の漏水調査ですが、人工衛星とAI技術の導入により豊田市は【期間5年予定】の漏水調査を、なんと【7か月】に短縮する事に成功しました。
また、水漏れ調査の期間が大幅に短縮できただけでなく、調査にかかる費用も数千万円から数百万円にまで削減可能になり、全国の自治体も広がりをみせています。
〇他にもある注目される最先端の技術
【水道管の劣化具合が分かるシステム】
兵庫県朝来市が導入したシステムで、老朽化した水道管の水漏れ事故を未然に防ぐ事が可能になりました。
アメリカでは既に取り入れられているシステムで、水道管の破裂をAIが予測。
デジタル化された地図上で水道管が自動で色分けされ、青は安全・黄色は注意・赤は危険など、一目で危険な水道管を把握できます。
Q:AIってなんだか凄いですね、どういった方法で予測しているんですか?
A:AIにその土地の地盤や傾斜、気象条件や水道管の情報など、なんと1000以上のデータを学習させ、水道管の劣化を予測しているのです。
【劣化して水漏れの恐れがある水道管の修理や交換がピンポイントで可能に】
経年劣化の進行度はそれぞれの水道管によって違うことから、これまでは年数の「古いものから交換」していた作業から、AIシステムを導入した事により「使える管は使えなくなるまで使う」という事が可能になりました。
〇導入後1年で補修費15%の削減に成功出来たとの事です。
いかがでしたか。
蛇口をひねれば出てくる美味しくて安全で低価格の水。
生活に欠かすことの出来ない当たり前のインフラを守るために、
最先端の技術が、これからの水道危機を救うのかもしれませんね。
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