日本の水道水はそのまま飲めるほど安全とされていますが、その背景には**高度な「浄水処理法」**が存在します。
この記事では、水道施設で行われている主な2つの浄水処理方法「緩速ろ過法」と「急速ろ過法」について、その仕組みや違い、使用される工程をわかりやすく解説します。
浄水処理法とは、水道施設が水源から取水した「原水」を人が飲めるレベルの安全な水(上水)に浄化する工程のことです。
日本の水道施設では主に以下の2種類の処理方式が用いられています。
• 緩速ろ過法(かんそくろかほう)
• 急速ろ過法(きゅうそくろかほう)
緩速ろ過法は、古くから用いられている自然浄化に近い方法です。
● 特徴と工程:
1. 原水を「普通沈殿槽」で時間をかけて沈殿処理
2. 砂ろ過池にて、表層に繁殖した**好気性微生物(バイオフィルム)**の働きによって有機物や病原菌を分解
3. ろ過された水を消毒(塩素処理)
● メリット:
• 化学薬品の使用量が少ない
• 味やにおいが比較的自然なまま
● デメリット:
• 大きな敷地面積が必要
• ろ過速度が遅いため、大規模供給には向かない
現在の日本の浄水施設で主に採用されているのが急速ろ過法です。
● 特徴と工程:
1. 原水に**凝集剤(主にポリ塩化アルミニウムなど)**を添加
2. フロック(沈殿物)を形成して「急速沈殿槽」で分離
3. 砂ろ過層で微細な汚れを除去
4. **前塩素処理(必要に応じて)**で鉄・マンガンを酸化して除去
5. 消毒(塩素処理)で病原菌を殺菌
● メリット:
• 処理能力が高く、大量の水を迅速に処理可能
• 都市部など人口密集地に向いている
● デメリット:
• 薬剤管理や設備運転に高度な技術が必要
• フロック処理の工程にコストがかかる
急速ろ過法では、鉄・マンガンなどの溶存金属を酸化除去するため、ろ過前に塩素を注入する「前塩素処理」が行われることがあります。
この処理により、ろ過装置への負荷を軽減し、より効率的に浄化を行うことが可能になります。
日本で最初に本格的な水道施設が整備されたのは**1898年の淀橋浄水場(東京都)**で、当時は緩速ろ過法が採用されていました。
その後、急激な都市化と需要の増加に伴い、昭和以降は処理効率の高い急速ろ過法が全国で主流となっていきました。
• 原水:川や湖、地下水などの処理前の水
• フロック:凝集剤と反応してできる浮遊物質の塊
• 好気性微生物:酸素を使って有機物を分解する微生物
• 残留塩素:消毒に使用された塩素のうち、殺菌効果を保ったまま水に残っているもの
私たちが毎日使っている水道水は、緻密で高度な処理技術によって安全が守られています。
「緩速ろ過法」「急速ろ過法」どちらも、用途や地域の特性に応じて適切に使い分けられており、どの処理方法も長年の実績と信頼に基づいたものです。
水道の仕組みを少しでも知っておくと、水道修理やトラブルの際にも役立ちます。
暮らしの安心を支える水道の裏側、ぜひ知っておいてくださいね。