たちが日常的に使用している水道水は、基本的に安全に管理されていますが、ごくまれに地質や人為的な汚染によって有害な化学物質が混入する可能性があります。これらの物質は長期間摂取すると健康に深刻な影響を及ぼすことがあるため、水道水の安全性について理解しておくことが大切です。
この記事では、水道水に含まれるおそれのある有害化学物質5種について、その特徴や由来、人体への影響、そして対策方法について解説します。
■ヒ素(As)
• 発生源:地質に由来する自然由来のもの、鉱山排水、化学工場の排水など。
• 人体への影響:ヒ素は少量でも長期間摂取すると、
• 角化症(皮膚が硬くなる)
• 色素沈着
• 皮膚の黒ずみ(黒皮症)
• 末梢神経障害
• 皮膚がんのリスク上昇 などが報告されています。
💡ヒ素は日本国内でも一部地域の地下水で自然由来の含有が確認されており、井戸水を利用する家庭では注意が必要です。
⸻
■フッ素(F)
• 発生源:地中の鉱物や一部工場排水に由来。
• 人体への影響:
• 過剰摂取すると歯の表面が白く濁る「斑状歯(はんじょうし)」
• 骨に沈着して骨折のリスク増加
• 骨フッ素症のリスクも
💡フッ素は虫歯予防の効果もあり、「適量の摂取であれば安全」とされていますが、長期間の過剰摂取には注意が必要です。
⸻
■トリクロロエチレン(TCE)
• 用途:金属部品の脱脂洗浄や、工業用の有機溶剤として使用。
• 発生原因:工場で適切に処理されなかった排水や土壌に不法投棄され、地下水を汚染。
• 人体への影響:
• 中枢神経系の抑制
• 頭痛・めまい・錯乱
• 長期的なばく露で発がん性の懸念も
💡かつての不適切な産業活動によって、過去に飲料水に混入していた事例が全国で報告されています。
⸻
■トリハロメタン類(THMs)
• 発生メカニズム:水道水の塩素消毒時、有機物(腐敗物など)と反応して生成。
• 代表物質:クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ブロモホルムなど。
• 人体への影響:
• 肝機能障害
• 生殖への影響
• 発がん性(特に膀胱がん)リスクがあるとされています。
💡浄水処理工程での塩素注入量や有機物の量を適切に管理することで抑制可能です。
⸻
■鉛(Pb)
• 発生源:古い住宅の鉛管や鉛製継手部材からの溶出。
• 溶出の条件:pHが低い水(酸性)や、遊離炭酸が多い水に接すると溶け出しやすい。
• 人体への影響:
• 貧血(ヘム合成阻害)
• 胃腸障害
• 腎機能障害
• 子どもの発達障害や神経系への影響
💡現在は新築物件での使用は禁止されていますが、築年数が古い建物では注意が必要です。
• 古い住宅で鉛管が使われている可能性がある
• 井戸水や地下水を使用している
• 異臭・異味・濁りを感じる場合
• 水道局から「水質異常」や「調査」の通知が届いた場合
これらに当てはまる場合は、早めに水道局や水質検査機関に相談することをおすすめします。
◉日常生活でできる対策
• 朝一番の水道水は30秒程度流してから使用(特に古い住宅)
• 浄水器の定期的なメンテナンス
• 必要に応じて水質検査キットでチェック
• 不安がある場合は、ボトル水やブリタなどの家庭用浄水器を活用
◉行政のサポートを活用
• 各自治体では定期的に水質検査を実施しており、無料の検査制度がある自治体もあります。
• 水質に関する疑問は地域の水道局・保健所に相談しましょう。
水道水は通常、厳しい水質基準のもとで管理されていますが、地質や設備の劣化、人為的な要因により有害物質が混入するリスクも存在します。
特に、ヒ素・フッ素・トリクロロエチレン・トリハロメタン類・鉛などは、人体への影響が大きいため注意が必要です。
• 日常的な点検・清掃・浄水器の活用
• 不安な場合は水質検査を
• 不具合時は専門業者への相談を早めに
水の安全は、毎日の暮らしと健康を守る第一歩です。正しい知識を持ち、安心して生活できる水環境を維持していきましょう。